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田の除草に強敵熱中症

 Tシャツを通す炎熱が背中に痛い。息が切れ、鼓動が高鳴る。このまま続けたら間違いなく熱中症だ。
 日本に大雨をもたらした台風8号が通り過ぎた朝、除草機を押して田の草取りに掛かった時のことだった。「田んぼで倒れても誰も助けてくれないよ」という東京の家人の声を思い出し、作業を打ち切った。
 その日の明け方、台風は山梨に最接近したが、我が家の辺りでは雨も降らず風も吹かず、狐につままれたようだった。しかも午前中から青空が広がった。
 猛暑日になるという予報は繰り返し聞いていた。実際この日、甲府での最高気温は36.3度。湿度が高く風弱く、農作業には最悪だった。
 それでも、その日のうちに田の除草を終えてしまいたかった。というのも、法事のため週末には東京に戻らなければならず、その前に面倒な作業を片づけておきたかったからだ。
 ラジオは繰り返し熱中症の危険を警告していた。炎天下の重労働は熱中症への最短コースだ。そこで八雲さんに手伝ってもらおうと思いついた。彼は私に「手伝うことがあったら何でも言って下さい。暇ですから」と声を掛けてきたことがあるからだ。
 電話すると、あっさり断られた。腰痛が出たというのだ。自分の田を手植えしてきた彼も、今年は代掻きと田植えを人に頼んだ挙げ句、人力の除草もやめ、除草剤をまいてしまったという。
 私よりいくつか若いのだが、「この年になると、もうえらくて(大変で)……」と嘆く。
 除草は結局、法事を終えた翌週に持ち越した。今度は家人も一緒なので、氷入り経口補水飲料、体を冷やす保冷剤と、熱中症対策は万全。昼はモモパパさんに手伝ってもらい、翌朝は日の出直後の涼しいうちに取り掛かって何とか終えた。
 
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 そんな話を長老にすると、「昔は熱中症なんかなく、素手で4回除草したもんだ」と言う。地球がこんなに熱くなった今、手作業で4回など、気が遠くなる。


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# by kousyuu-hannoujin | 2014-07-20 03:59 | 2014年 下半期

陽の恵みで山の幸保存

 梅雨に入った頃、裏山でタケノコが採れる。このあたりで言うタケノコは、マダケのことだ。都会の店に並ぶモウソウより小型で地味だが、この時期の食卓を飾ってくれる。ありがたい山の恵みだ。
 今年も鎌と大袋を手に、竹林に入った。急斜面に落ち葉が積もって滑りやすく、切り倒された竹の枝が目の前に交錯する。油断すると危険だが、宝探しのように胸の躍る楽しさには勝てない。
 時期が悪いとまだ影も形もなかったり、伸び過ぎて青竹になっていたりする。この日はタイミングがよかったようで、30cm前後の食べ頃が20本以上も採れた。
 しかし今回は、食卓に上せるより、採ること自体が目的になっていたようだ。持ち帰ってから困った。いつもは家人がすぐに皮をむいてゆでるのだが、今回は単身赴任だった。皮をむくことはできるが、ゆで加減が分からない。それに、大鍋を出したり片付けたりするのは何とも面倒だ。近所の人に差し上げようとしたが、「あるから」と断られてしまった。
 仕方なく、干すことにした。昨年、万能百姓のマサトシさんの家を訪ねた時、刻んだかんぴょうのようなものがザルに干してあるのに気づいた。彼に聞くとタケノコで、カラカラに乾かすと保存が効くという。
 早速家人に教え、昨年は我が家でも作った。保存したのを水に戻して煮ると、ラーメンのメンマのような食感。ビールのつまみにちょうどいい。
 刻んで干すのなら私にもやれる。東京の家人に電話し、私が教えた方法を逆輸入した。皮をむき、7~8cmの輪切りにした後、厚めの短冊に切る。ひとつかみの塩をまぶしてザルに広げ、庭に出しておけばいい。
 梅雨時で太陽の出ない日が続くとかびてしまう。それが心配だったが、運よく3日間干すことができた。
 タケノコを干して保存するという知恵は、以前の私にはなかった。自然の恩恵だけを利用して冬の食を蓄える。農家のこの種の賢さにはいつも感心させられる。
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# by kousyuu-hannoujin | 2014-07-10 07:38 | 2014年 下半期

「専用肥料」の効果絶大

 1個250円。東京の家の近くの健康食品店に、1つずつ袋に入ったニンニクが並んでいた。国産はやはりそれなりする。私も先日、100個ほどのニンニクを収穫した。この店のよりずっと大きくて立派だ。
 棚の前で私の老朽化した人脳計算機が回転する。
 (250+α)×100=25000+100α
 αの値によって実際の金額に差は出るが、いずれにしろ種ニンニク代3000円を引いても、私の畑にしては予想以上の価値を生み出したことになる。だが店のニンニクは「農薬・化学肥料不使用」をうたっていた。私のは……。
 米にも野菜にも、私は農薬と化学肥料を使わない主義だ。ニンニクにも3年前までは有機肥料だけを施していた。乾燥に弱いので、ワラでマルチしたりして大事に育てた。ところが毎年期待外れの出来。球根1粒植えて収穫も1粒という情けない株もあった。
 失敗が重なり、骨折り損のくたびれもうけ感を味わい続けた。苗店の店頭にあった「ニンニク専用肥料」が、そんな私を誘惑した。有機と化学の混合肥料だ。時間が経つと溶け出す成分もあって、追肥不要。一昨年、初めて試した。主義を踏み外すが、種が高価なニンニクは別格だ、と自分を納得させた。
 結果は目を見張るほど。昨年の収穫では、幼児のこぶしのようなのが続々と掘り出された。それで昨年も同じ専用肥料を使った結果が、また今回の豊作だ。
 畑に並べておいたニンニクを見て、上の畑のタケちゃんが「すごいね」と声を掛けてきた。「ウチのは茎がこんなだよ」と親指と人差し指で小さな輪を作る彼に、専用肥料を教えた。彼は以前の私と同じ有機肥料を使っているのだ。
 日に干したニンニクは、葉と根を切り落とし、ひもで結んで母屋と納屋の間の通路につるした。一足早く収穫した玉ネギと並んで、安普請の家にも豊かな農家の風情を添えてくれる。あの程度の化学肥料なら許容範囲内かな、と思い始めている。
「専用肥料」の効果絶大_a0144738_3572732.jpg



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# by kousyuu-hannoujin | 2014-06-30 03:57 | 2014年 上半期

手植えで味わう連帯感

手植えで味わう連帯感_a0144738_415289.jpg

 稲の苗は今年も手で植えた。「田植え機を使えば手っ取り早いのに、なぜわざわざ」と近所ではあきれられているが、できる限り昔ながらの手植えを続けたい。
 二酸化炭素の排出を抑えたいという思いが元々の動機。小さい田だから出来るのだが、小さい田でやっても環境保全にはほとんど貢献しないというのは、どうしようもないパラドックスだ。
 それでも私にとって、手植えには別の大きな意義がある。他人と協働することで生まれる連帯感、汗の代償として得られる達成感だ。
 泥田で一緒に手足を汚してくれる人がいて、それが実現出来る。米作りを始めて14年目、顔ぶれは変わっても、参加してくれる同志がいつの年にもいる。
 今年もサルヒコ君が八王子から、ダンさんが隣市から来てくれた。近所のモモパパさんは夫婦で。そしてモモパパさんが何かの会合で顔を合わせたという、それだけの縁で丸大君が東京から初参加してくれた。
 実は前日、大雨で中央道が通行止めになった。サルヒコ君は当日も通行止めが続くと電車で来るのが面倒なので、腰痛を言い訳にしてサボる算段を考えていたそうだ。幸い腰痛は出ないで済んだ。真面目な丸大君は前日、高速バスをあきらめて電車で来ていた。
 当日、雨は上がって薄曇り。直射日光にさらされることなく、肉体労働には絶好の天気だった。印をつけた1本のひもを頼りに植え付けるやり方だが、メンバーの息が合ったのか、朝9時過ぎから始めて昼過ぎには植え終えた。しかも苗は縦、横、斜めから見て、碁盤の目状にそろった。後で除草がしやすい。
 昼は我が家で家人が作った炒飯、夜も町の温泉で汗を流した後に我が家で宴会。身重の細君を持つダンさんは欠席したが、ビール7本、酒1升余りを空けて話が弾んだ。文字通り「同じ釜の飯を食う間柄」なのだ。
 村内で1人で手植えをしてきた八雲さんは今年、機械植えに切り換えた。やはり1人では無理なのだ。私の田は、同志がいてくれる限り続けられる。


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# by kousyuu-hannoujin | 2014-06-20 04:16 | 2014年 上半期

用水の動脈は手作り樋

 田植えの前に、今年はどうしてもしておかなければならない仕事が1つ多かった。トタン板を加工して樋を作ることだ。用水路から水を引くために使ってきた樋は腐って穴だらけ。寿命が限界を超えていた。
 最近の棚田の多くはよく整備されていて、コンクリート製の水路を共用している。どこも同じ仕様の大量生産品だ。しかし私の田は違う。上の用水路から昔ながらの専用の手掘りの溝で水を引いている。
 すぐ上の田とは1m以上の落差があって、溝を通った水は、ほっておけばそのまま排水路に落ちてしまう。排水路をまたぐ樋で水を田に導く仕組みだ。
 去年までは前の人が残した樋をそのまま使っていたが、あちこちから水が漏れる。田の命である水の唯一の動脈がこれではどうしようもない。
 何年か前から更新を考えてきた。しかし私の田にしか通用しないシロモノだから、店で売っているわけではない。古いのとそっくりそのままのコピーを自作するしかない。トタン細工などしたことがなく、自信はないが、必要に迫られてやらざるを得なかった。
 鉄ばさみを買うところから始まった。トタン板も手持ちがなかったので、上の畑にいたタケちゃんに声を掛けた。「あるよ」と言って、川向こうの畑からすぐに軽トラに積んで来てくれた。
 トタン板の扱いに慣れていなかったので、折り曲げようとして跳ね返り、足に軽いけがをしたのだけが失敗だった。樋そのものは1時間かそこいらで、先代とそっくりそのままに仕上がった。やれば出来るものだ。
 代掻きのため水を田に入れる日、この樋を水の落ち口に取り付けた。樋の断面が溝の断面にぴったり合うよう、金づちでたたいて成型した。水がきれいに入っていく。もっと早く作っておけばよかった。
 樋の手作りに自信はついた。しかし新しい樋は少なくとも10年はもつ。その上、この棚田にも改修計画が持ち上がっている。近々、今風の田になって、せっかくの腕をふるう機会はもう来ないだろう。
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# by kousyuu-hannoujin | 2014-06-10 07:10 | 2014年 上半期